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0002:頚椎症とはどんな病気?〜脊椎と脊髄神経の病気〜

脊椎・脊髄外科]田宮 亜堂 医師
(2019/10/01 更新)

「頚椎症(けいついしょう)」とはどんな病気?

「頚椎症(けいついしょう)」とはどんな病気?

首の骨(専門用語で頚椎といいます)は、全部で7個あります。椎間板(ついかんばん)といわれる軟骨結合や椎間関節(ついかんかんせつ)、いくつかの靱帯でお互い連結しています。

手足の動きや指先の感覚の情報は、脊髄神経(せきずいしんけい)を通って脳と末梢神経(まっしょうしんけい)を行き来します。その脊髄神経の通り道(脊柱管(せきちゅうかん)といいます)が狭くなることで、脊髄神経が圧迫されてさまざまな症状が出現します。この病態が「頚椎症」です。

「頚椎症」の原因は何ですか?

「頚椎症」の原因は何ですか?

年齢とともに頚椎や椎間板、靱帯は変形してきます。

最近ではパソコン作業やスマートフォンなどによる首に悪い姿勢が変形に影響しているとも言われています。

上図のように、頚椎が変形すると骨から突起が生じて(骨棘(こつきょく)といいます)、神経を強く圧迫します。また靱帯は徐々に肥厚してきて、神経を圧迫していきます。

こういった変化に加えて、私たち日本人の場合は、欧米人と比べて脊柱管の幅がもともと狭いのも、脊髄神経の圧迫が起きやすい理由となっているのです。

「頚椎症」の症状はどんな症状?

手や腕のしびれ、痛み

初期は指先のしびれから始まることが多く、徐々にしびれの範囲は広がっていきます。脳梗塞によるしびれや手根管症候群をはじめとする末梢神経のしびれなどとの鑑別が重要となってきます。また痛みで発症する場合は、脊髄神経からの分岐している神経根の圧迫(頚椎椎間板ヘルニアなど)が原因となっていることが多いです。

細かい指先の動きが鈍くなる

病状の進行とともに指先の感覚が鈍くなってくると、ボタンをはめたり、お箸を使ったり、字を書いたりすることが苦手になってきます。財布から小銭を出したり、机の上にある新聞紙をめくったりすることも困難になります。これを巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)といいます。

握力の低下

感覚神経だけでなく、運動神経の障害が始まると握力の低下や上肢の挙上が困難になってきます。握力が一桁(10kg以下)になると、日常生活上も支障をきたすようになります。この時点では、早期に手術治療を行うことをおすすめします。

両足のしびれ、足の裏の違和感

両足のしびれで始まる足の症状は、進行とともに足の裏が地面についていないような違和感(スポンジの上を歩いている感じなど)が出現します。放置すると、徐々にふらつきが強くなってきます。

歩行障害

足の裏の感覚障害や下肢筋力低下により、足がもつれて転倒しやすくなります。歩く歩幅が小さくなったり、階段で手すりが必要になったりします。特に階段は降りる方が怖いようです。

尿が出にくい、尿が漏れる、便秘

病状がかなり進行すると、尿が出にくくなったり尿漏れをしたりといった排尿障害が出てくるようになります。尿が出にくい場合は、1度の排尿量が少ないので、夜間も含めて何回もトイレに行くようになります。 加齢による変化、脳神経外科領域の水頭症、泌尿器科領域の前立腺肥大との鑑別が重要になります。
  • 比較的若い方であれば、駆け足(小走り)やケンケン(片足跳び)がしにくくなるなどの軽度の症状で自覚することが多いのですが、高齢の方では発見が遅れる傾向にあります。
  • 手における著しい巧緻運動障害の出現、握力の低下および下肢症状が出現してつまずきやすくなったときには手遅れにならないように手術治療をすすめます。